Fragment

- Stars on earth, stars in the celestial. -
こぼれ話

「約束のヴェンデッタは竜の歌声と遊ぶ」よりトーリとフリア。
旅の途中。
……永遠を願う。ただ強く。

 夜空に白銀の月が架かっていた。
 月光を浴びて濡れたように光る草木を踏みしだき、フリアは夜の空を見上げる。
「今日は、中秋の名月ですね」
「チューシューのめいげつ?」
「東の最果てにある島国では、この季節の満月のことをそのように呼ぶそうです。とてもきれいな月」
「確かにそう言われると、特別きれいに見えるかもしれない……」
 そう言って、トーリも星空に浮かぶ明るい満月を見上げる。
 ふと、トーリがつぶやいた。
「きれいだね、月」
「ええ」
 フリアが月の明るさに目を細めれば、トーリが感じ入った様子で、本当にきれいだよね、と繰り返す。
 その素直な言葉に、フリアは万感の想いをこぼす気持ちでうなずいた。
「ええ、本当にきれいで……」
 言いながら、なぜだか不意に泣いてしまいそうになった。慌てて目を擦る。
「フリア?」
「な、なんでもありません。」
 トーリに背を向け、祈るように手を組む。
 旅が終わらなければいい。
 初めてそう思った。
 竜も見つからないで、このままずっと。ずっと、ただ、トーリとクィーと旅をしていたい。
 だって旅が終わったら、フリアは帰らなければならない。
 また、閉鎖された居場所で、息を殺して生きていく。

 ……永遠を願う。ただ強く。
 
 月明かりだけが、ここにあふれていた。CLOSE(閉じる)


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