こぼれ話「約束のヴェンデッタは竜の歌声と遊ぶ」よりトーリとフリア。旅の途中。……永遠を願う。ただ強く。OPEN(続きを読む) 夜空に白銀の月が架かっていた。 月光を浴びて濡れたように光る草木を踏みしだき、フリアは夜の空を見上げる。「今日は、中秋の名月ですね」「チューシューのめいげつ?」「東の最果てにある島国では、この季節の満月のことをそのように呼ぶそうです。とてもきれいな月」「確かにそう言われると、特別きれいに見えるかもしれない……」 そう言って、トーリも星空に浮かぶ明るい満月を見上げる。 ふと、トーリがつぶやいた。「きれいだね、月」「ええ」 フリアが月の明るさに目を細めれば、トーリが感じ入った様子で、本当にきれいだよね、と繰り返す。 その素直な言葉に、フリアは万感の想いをこぼす気持ちでうなずいた。「ええ、本当にきれいで……」 言いながら、なぜだか不意に泣いてしまいそうになった。慌てて目を擦る。「フリア?」「な、なんでもありません。」 トーリに背を向け、祈るように手を組む。 旅が終わらなければいい。 初めてそう思った。 竜も見つからないで、このままずっと。ずっと、ただ、トーリとクィーと旅をしていたい。 だって旅が終わったら、フリアは帰らなければならない。 また、閉鎖された居場所で、息を殺して生きていく。 ……永遠を願う。ただ強く。 月明かりだけが、ここにあふれていた。CLOSE(閉じる)#サイト未収録 #ヴェルシエル大陸 #本編未収録 novel 2024/04/30(Tue)
「約束のヴェンデッタは竜の歌声と遊ぶ」よりトーリとフリア。
旅の途中。
……永遠を願う。ただ強く。
夜空に白銀の月が架かっていた。
月光を浴びて濡れたように光る草木を踏みしだき、フリアは夜の空を見上げる。
「今日は、中秋の名月ですね」
「チューシューのめいげつ?」
「東の最果てにある島国では、この季節の満月のことをそのように呼ぶそうです。とてもきれいな月」
「確かにそう言われると、特別きれいに見えるかもしれない……」
そう言って、トーリも星空に浮かぶ明るい満月を見上げる。
ふと、トーリがつぶやいた。
「きれいだね、月」
「ええ」
フリアが月の明るさに目を細めれば、トーリが感じ入った様子で、本当にきれいだよね、と繰り返す。
その素直な言葉に、フリアは万感の想いをこぼす気持ちでうなずいた。
「ええ、本当にきれいで……」
言いながら、なぜだか不意に泣いてしまいそうになった。慌てて目を擦る。
「フリア?」
「な、なんでもありません。」
トーリに背を向け、祈るように手を組む。
旅が終わらなければいい。
初めてそう思った。
竜も見つからないで、このままずっと。ずっと、ただ、トーリとクィーと旅をしていたい。
だって旅が終わったら、フリアは帰らなければならない。
また、閉鎖された居場所で、息を殺して生きていく。
……永遠を願う。ただ強く。
月明かりだけが、ここにあふれていた。CLOSE(閉じる)
#サイト未収録
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#本編未収録