Fragment

- Stars on earth, stars in the celestial. -

2024/4/ この範囲を時系列順で読む この範囲をファイルに出力する

外交都市イリ—・リーのある商家の男女の話(ラブコメ注意報!)

 ヴァリエンテ商家が、ベレンヘーナ商家を買収した。
 古い商家が多額の債権を背負い、経済的に落ち込んだところを他の商家に買収されるのは珍しくもない。
 そして、ここ外交都市イリー・リーにおいて、買収されて相手の傘下に入ることは、相手に隷属することに等しい。
 シルエラ・ベレンヘーナは、隷属する側になった。
 ただ、それだけの話で、その相手がよりにもよって──

(ラブコメを書いてみよう、というセルフ企画で書いたものになります!)

「……で、いつまでぶすっ垂れてんだよ」
 男の声に、シルエラはレース刺繍のクッションを抱きしめた。はしたなくソファの上に脚をあげ、座り込む。既に紅茶はすっかり冷めていた。
 左斜前には、書簡でいっぱいの仕事机を片付けもせず、椅子でゆったりとくつろぐ二十歳ぐらいの男の姿。
 そんな男のそばで控えるのは、古い柱時計のごとく微動だにしない還暦の執事。机の端に脚を投げ出した男を、執事はたしなめることもしない。
「ブスになるぞ」
「……なんで」
「あ?」
 やっとのことで絞り出した声はガサガサだった。広く高い天井に響かず、無様に散る。
 男はきょとんと学生みたいな顔で、シルエラを一瞥した。
 ああ、憎たらしい。憎たらしいことこの上ない。だが、家の窮地を救ってくれたのは間違いなく、この男だった。
 金の力をバックとする新興ブルジョア階級、ヴァリエンテ家の三男。
 シルエラの家を債権ごと買い取った男。
 そして、シルエラの幼馴染。
 ──クロード・ヴァリエンテ。
「なんで、あたしの家を買ったのよ」
「ピンチみたいだったから」
「よくヴァリエンテ家が、赤字まみれのベレンヘーナ家を買い取ることを許したものね。問題児の三男坊がやらかしたってゴシップでも書かれるんじゃない?」
「次男坊に比べりゃマシな方だろ。ある程度、事業で結果りえきは出してっから割と好きにやっても怒られねぇし。あと、プライベートで動かせる金はある程度あったからな」
「余計なことしないでよ!」
 ぴしゃりと甲高く叫ぶ。
 カチンときたらしい。クロードが片眉を持ち上げる。
「余計なことたあ、ずいぶんな言い草だな。お前んとこの従業員も、お前の親も、お前自身も、露頭に迷うこともない。こちとら感謝される理由はあっても、非難される筋合いはねぇな」
「あたしは、こんなことして欲しくなかった……!」
「だったら、なんで俺や他のやつらに相談しなかった。交渉のコツ、ルール違反にならない範囲でのツテや紹介。夜会にも商人組合にも顔出さなくなりやがって。お前んとこから仕事もらってた職人のじいさんがお前のこと心配してたぞ」
「あのねえ!」
 ばっと顔を上げれば、シルエラの白金の髪が乱れた。構わず黒髪の幼馴染を睨む。
「あなたは腐っても、ヴァリエンテ家の三男坊! そんなところと変な噂でも立ってでもみなさい! 癒着だ裏金だの、もっと大変になるでしょう!」
「なら正面から融資を申し込むっていう手だってあっただろーが! そうなりゃ、俺の親父だって外聞を気にして無下に扱わない──」
「そしたら、あなたが口添えしてくれるって!? 馬鹿にしないで! 銀行から融資を断られたからって、友達の家にどの面下げてお金貸してくださいって言えるのよ!」
 惨めだった。惨めさに涙が出てきそうになる。だが、泣くのは卑怯だ。ぐっと食いしばる。
「あなたさっきから好き放題言ってくれるけど、逆の立場だったら両親を連れてあたしのところに同じようにお金借りに来れた!?」
 初めてクロードが言い淀んだ。シルエラは畳み掛ける。
「お金っていうのはね、あなたもわかってる通り、貸したらもう友達に戻れないの! 対等な関係を失うの! 貸した方が絶対的に強いのよ! 返し終わっても、貸したという事実は変わらないし一生消えない! あたしは…っ、あなたとは…あなたとだって……」
 声が震える。弱々しい涙声は、覇気のない吐息となって消えた。
 心配してくれる友人はたくさんいた。
 みんな優しかった。だが、金銭が絡むことについては、どうしても頼れなかった。頼るわけにはいかなかった。

 だって、家のお金のことで、どうして頼れるのだろう。

 そうして友人を避けているうちに、華麗な社交を繰り広げる夜会や、数多くの裕福な実業家が集まる商人組合にシルエラ本人が行くことも少なくなった。そうやって商談の場や情報、そして友人。大切なものから自分から離れていった。
 水の底のような静けさが、室内に落ちる。
 やがて。
「……そうだな。もう、お前とは友達でも幼馴染でもねぇな」
「……っ」
 言葉が胸に突き刺さる。自分が放った言葉を返されただけなのに。
 彼に助けられたと思う反面、なにかとても大切なものを失ってしまった気がして、空虚になる。
「なら、友達じゃなきゃ問題ねぇよな」
「へ?」
「ガロフ」
「はっ」
 今まで一言も喋らず動きさえしなかった還暦の執事が、声を発した。
 あらかじめ用意していたとしか思えない素早さで、執事はシルエラの前、低いテーブルの上にささっと上質の紙を置く。
 シルエラは紙を見るなり目をむいた。
「ちょ、なにこれ──」
「婚姻届」
「こん……っ!?」
 シルエラの声が裏返る。
「お前が言ったんだろうが。金を貸したら友達じゃなくなるって。なら、結婚すりゃいいだろ」
「ど、どうしてそういう話になるのよ!」
「結婚したら相手の人生の半分、自分のモンみたいなとこあるだろ。夫婦になれば、お前ん家の金の問題に首突っ込むのになんの支障もねぇ」
「それ、は、で……も!」
「頭回ってねぇみてぇだから言ってやるが、第一、俺がお前んトコ買った時点で、事実上の結婚になることぐらいわかってただろうが」
「うっ」
 指摘に口元が苦く引きつく。
 買収にしろ合併にしろ、新しく傘下に入った商家の子と、買収した側の商家および傘下の商家の子とが婚姻を結ぶのは慣習だ。建前は、つながりをより強固なものにするため。商業都市メアンドレでは、邪道とされる考え。
 今回、シルエラは買収された側で、ベレンヘーナ家の一人娘だ。他に子がいない以上、シルエラが結婚するしかない。
 だが──
「あ、あなたのところなら、あなた自身があたしと結婚しなくても、他に同じ傘下内で相手はいるでしょう?」
「それじゃ意味ねぇんだよ」
 突然、クロードが怒ったような顔で言ってくる。
「意味がない……?」
「いや、お前と似たような年の子供、今は俺ぐらいしかいねぇし」
「別に年上でも年下でも──いいえ、そもそも婚姻にこだらわなくてもいいでしょう? 使用人でも従業員でもなんでもすればいいじゃない」
「同感だがそれができりゃ苦労はしねぇし、ついでに言わせてもらえんなら、お前をそういう風に扱ったら、お前んトコの従業員に白い目で見られるだろーが。お断りだね。息がつまる」
「嫁にもらっても似たようなものでしょ!」
 シルエラが毅然と言い切れば、のほほんとした執事が下から何かを差し出してくる。
「まあ、そうおっしゃらずに。シルエラ様、こちらのペンを」
「だからサインなんてするものですか──って、あら? このペン……」
 気づき、目が止まる。
 執事から恭しく差し出されたのは、光沢の美しい木箱に納められた未使用と思しき万年筆だった。紅い万年筆の表面には、金銀で箔押しされた花模様。見間違いがない。思わず手に取って確かめる。
「これ……クレッシェレのペンじゃない。しかも十周年記念の」
「え」
 ぎくりとした動揺は、クロードからだった。いきなり、がたがたと慌てたように引き出しをひっくり返し始める。
「左様でございます」
「このメーカーのペン、素敵よね。私も父様にプレゼントでもらったけど」
「こちらは三年前、坊ちゃまがシルエラ様のお誕生日ブレゼントに、と購入されたものでございます」
「え?」
「じじぃ!?」
 ばん!とクロードが机を叩いて立ち上がる。
 ガロフは胸元からハンカチーフを取り出すと、目頭に当てた。涙ながら、そっと語り出す。
「ですが、当時、シルエラ様のお父様のプレゼントと重なってしまい……その頃、シルエラ様もご家庭の事情で皆様と距離を置き始めた頃。渡そうにも勇気が出ず、さりとて捨てることもできず、引き出しの中で日の目を見ずに終わるものかと思っておりましたが、まさかこのような形でお渡しできるとは」
「余計なこと言ってんじゃね────っ!」
 真っ赤な顔のクロードが、ものすごい剣幕で叫んでくる。
 シルエラは当惑で目を瞬かせた。今までのクロードとの会話が全部頭から吹き飛ぶ。
「な、……なんで、なんで渡してくれなかったのよ?」
 すると、クロードがものすごい仏頂面になった。教苑ステアケースの学生時代を思い出す顔。年齢はシルエラと同じでもう二十歳のはずだが。
 どすん、とクロードは乱暴に席に座り直すと、ぼそっと。
「……同じものは、二つもいらないだろ」
「ばか!」
 シルエラは反射的に叫んでいた。
「そんなわけないでしょう! あなたからのも大事に使うわよ……!」
 そう言って、ぎゅっとペンを握りしめる。
「シルエラ様……」
 ガロフが、感動したようにシルエラの名を呟く。
 直後、しれっと言ってきた。
「なお、あちらの棚には、今まで毎年坊ちゃまがシルエラ様のお誕生日のために購入されたものの渡せずに終わった数々の品が」
「ほんっとばっかなの!?」
「うるっせええええええええええぇぇぇぇぇぇっ!」
 だんだんだんと仕事机を両手で叩くクロード。反論できなくなると一気にボキャブラリーが減るのは学生時代とまるで変わらない。
 三年前、シルエラの家は少しずつ経営が傾いたために、友人たちと疎遠になり始めていた。
 それでも、この幼馴染は毎年シルエラのために、誕生日プレゼントを用意してくれていたらしい。
 胸に疼いていた苦い痛みがふわと溶け、温かいものが満ちてくる。無愛想な顔で、どこか照れた様子でそっぽを向く幼馴染は子供っぽい。学生時代を思い出して懐かしくなり、笑ってしまいそうになる。
 ふと、シルエラはガロフが示した棚をちらりと見やった。壁際の本棚二架にあふれる個人蔵書の隣、美術品のような風格を持つ棚が置かれている。
 シルエラはそわそわと期待と好奇心が弾んだ声で頼み込んだ。
「ね、ねえ、ガロフ。よかったら、クロードが買った他のプレゼントも見せてもらえないかしら」
「もちろんですとも」
「ありがとう!」
「俺の許可を取れ許可を!」
「では、こちらのペンで書類にサインを」
「しないわよ!?」
 クロードから舌打ちが聞こえた。
 ガロフがはらはらと涙を流す。
「やはりあの品々は日の目を浴びずに終わる定め……」
「そ、それとこれは話が違うわよっ」
「ケチケチすんじゃねーよ。サインの一つや二つ」
「サインする書類が書類でしょう!」
「きーきーきゃーきゃーうるっせぇな。別にいいだろ。どうせサインするしかねぇわけだし」
「よくな──」
「よくありませんわ!」
 ばんっと、扉が開く音。両開きの扉を開き、唐突に室内に入ってきたのは背の低い小柄な女性だった。つかつかときれいな足音で石床を進み、クロードの元へ真っ直ぐ向かう。
「お嬢様の婚姻! このアリコが異議を唱えさせていただきます!」
 肩まで伸びた黒髪を切りそろえた二十歳半ばの女性。清貧な黒い服の上に白いエプロン。頭には髪を押さえるシニヨンの頭飾り。紛れもない、シルエラの使用人の──
「アリコ!」
 シルエラは指を鳴らすと目を輝かせた。
「素晴らしいタイミングだわ!」
「お待たせいたしました、お嬢様。あとはこのアリコにお任せください」
 そう言って、アリコは仰々しくシルエラに一礼した後、きっ、とクロードを強く睨んだ。強気の態度。
 だが、クロードは露も動じず、下からアリコを見上げるだけだ。
「アリコ・シラサギ、か。……お前、今までシルエラん家からいくらもらってた?」
「そのようなこと、あなた様に教える義理はございません」
「そーよ。っていうか、いきなりいくらもらってたとかあなた失礼──」
「わかった。じゃあ賃金は今までの倍出すから、俺の使用人になれ。業務内容は今までと同じ。そこのシルエラの世話」
「え?」
「何なりとお命じくださいご主人様」
「変わり身早っ! って、アリコォッ! 裏切ったわね!?」
 甲高く喚くシルエラ。既に、アリコはクロードの前、正確には仕事机の下にひざまずいている。
「何も裏切っておりません、お嬢様」
 アリコはきっぱりと芯の通った声で言い切ってきた。目を閉じ、クロードに対する低姿勢はそのまま、忠義に満ちた声で続けてくる。
「わたくしはお嬢様を敬愛しております。そして、お嬢様のお世話をするのが好き。また、お金もこよなく愛しております」
 そこで立ち上がり、シルエラの方へ向き直ると、細い指を組み、祈りの形を取る。
「愛するお嬢様のお世話をさせていただける上に、わたくしのお給金は今までの倍になってハッピー。お嬢様も今まで通り、わたくしの世話を受けられる。それどころかわたくしの給金をお支払する必要がなくなる……何か問題でも?」
「問題……って聞かれると、ないような気がするけど」
「ならばよろしいではありませんか」
「よ、よくない! よくないわ!」
 大慌てでクロードと──正確にはクロードの仕事机とアリコの間に割って入り、大声を張り上げる。
「心配することはありません、お嬢様。今まで通りアリコはお嬢様のおそばにおります」
「いや、そこを心配してるわけじゃなくて!」
「まあっ、使用人に過ぎないわたくしのお金の心配をしていただけるなんて……ですが、ご安心ください。今後のお給金はクロード様が出してくださいますので、なんにもこれっぽっちも心配はいりません」
「いや違う! さっきからなにかが違うわ!」
「さっきからよくないだの違うだの、アレも違うコレも違う……いつからお嬢様はそんな我儘になられたんですか?」
「これあたしがお説教される流れなの!?」
「ご安心ください。このアリコ、今まで以上に誠心誠意、尽くさせていただきます。お給金倍ですし」
「話はまとまったな」
「なんにもまとまってないと思うんだけど!?」
 首だけで背後を振り返れば、クロードが机に頬杖をついて、呆れともつかない息を吐いている。
「じゃあ、何が問題なんだよ」
「何って……」
 いきなり冷水をかけられた気分で、シルエラは口を閉ざした。
 今度はクロードに身体ごと向き直り、落ち着いた口調で返す。
「……結婚なんだから、好きな人とって思うじゃない」
 浮かない顔で答える。なんとなく気分は憂鬱だった。
 クロードから皮肉な笑みが返される。
「ほー、大した純情乙女。結婚なんて俺たちの界隈じゃ単なる手段で、跡継ぎじゃねぇ三番目四番目の娘や息子を他の家に嫁がせたり結婚させたり愛人にさせて、とりあえず繋がり持たせるのなんて常套手段だろ」
「そういう話じゃなくて! っていうか、あなただって、好きでもない女性と結婚なんてしたくないでしょう!?」
「好きだが」
 呼吸が止まった。
 盛大な聞き違いをした気がして、シルエラが固まる。
「あの…、ごめんなさい、えっと、なんか、あたしの頭がおかしくなったかもしれないから、もう一度聞かせて欲しいんだけど、誰が誰のことが好きって……」
「お前のことが好きだった。三年前、お前が家のことで大変になったとき、なんで頼ってくれないんだと憤った。頼るだけの甲斐性が俺にはないのかと自分にも憤った。でも、お前はどの友人とも距離を置こうとしてて、それなら仕方ねぇって思いながら、でも、お前が時折、誤魔化すように苦しそうに笑うのを見るのは嫌だった」
 クロードが静かに椅子を引き、立ち上がる。目線がシルエラより頭ひとつ分高くなり、見上げる形になる。無意識に、シルエラは一歩後ろに下がった。
「お前の家を他の商家が買おうとしているっていう話を聞いたとき、腸が煮えくり返りそうになった。別の男のものなるぐらいなら、金でお前を手に入れようと思った」
 すらすらと、淀みなく。
 真っ直ぐ、一切の揺らぎもなく、クロードが正面から告げてくる。
 低く静かに抑えられた声が、逆に込められた感情の強烈さを物語っていて。
 本気、の二文字が脳裏に浮かんだ。息を飲む。
「あ…たし」
 仕事机を挟んで立つ彼に、何を言うべきかわからない。
 クロードのことをそんな風に考えたことがなかった。
 正確には、この三年、経営に明け暮れてそれどころではなかった。ただ、家のために奔走していた。
 距離をおいた友人たちには申し訳ないことをしたと思っていた。
 クロードも、その中の一人で、そんな彼から今こうして不意打ちで告白されている。
 そんなこと、だって、そんなこと急に言われたって──なにもかもが急すぎて、頭がついていかない。
「お嬢様……」
 と、いつの間にかシルエラの足元で膝をついていたアリコが、見捨てられた子犬のように目をうるませて見上げている。
 シルエラは、うっ、と言い淀んだ。同情を誘う目。五つ年上のくせに、この愛玩動物のように愛くるしい目は何なのか。
「どうか……」
 儚く、淡い色の唇が切なげに音を紡ぐ。吸い込まれる。
「どうか、わたくしのお給金のために」
 ぶつん、と堪忍袋の緒が切れる音がした。
「なに、よ。なによなによなによ……」
 肩を戦慄かせ、クロードを勢いよく指差す。
「あなたが私のことが好きだとかそんなの知らなかったわよ知りもしなかったわよ! 今まで家の問題に押しつぶされそうだったっていうのに、いきなりそんなこと言われたって──なにこれあたしが悪いの!?」
「それは今まで坊ちゃまがあまりにも奥手だったばっかりに……返す言葉もございません」
「さっきからうるっせぇぞじじい!」
「え、お嬢様、本当に気づいておられなかったのですか?」
「なんでアリコが気づいてるのよ!?」
 いちいち高ぶる感情に水を指してくる使用人は、まるっきり意外そうな顔でぽっかりと口を開いている。相変わらずのおっとりとした物言いで、アリコはシルエラの感情の腰を折ってきた。
「お嬢様の周囲にいらっしゃる方がお嬢様にどのような感情を抱いてるかぐらい、このアリコ、当然把握しておりますとも。好意的な方はさておき、度を過ぎるほど非好意的な方にはご・退・場・いただいております」
「うっわ」
「今知りたくなかったわ、その情報」
 クロードと一緒に半眼になる。
 ご遠慮ではなく、ご退場。言葉の具体的な意味を追求したいような追求するのが怖いような。
 なんだか一気に白けたような気分になり、クロードと一緒に、はー、と脱力して肩を落とす。
 と。
「……で、他にもまだ理由と言葉が必要か」
 出し抜けに放たれたクロードの言葉に、再び緊張が走る。声音はいくらか通常のものに戻っているようだが、アイスブルーの瞳は相変わらず研ぎ澄まされている。シルエラを捉えて放さない。
 また、シルエラもクロードから目を逸らせない。逸らしてはいけない。
 きっと今、逸らしたら追ってくる。そうしたら逃げられない。動物的な直感がそう言っていた。
 すると、程なくしてクロードの空気が軟化する。クロードの方から視線が切れる。隙が生まれる。彼は目を閉じると、がしがしと適当に頭をかきながらぼやいてきた。
「まあ、いきなりすぎるっつーのはわかっからよ。お前も色々大変だっただろうから、しばらく時間をおいて考えてもら──」
 その頃には、シルエラはばたばたと部屋から逃げ出していた。

 *

「あんにゃろ……」
「逃げられましたわね」
「ほっほっほ」
「ふっっっざけんな!?」
「奥手が急に本気を出すからこんなことになるんですよ、クロード様」
「シルエラ様に逃げられてしまっては本末転倒ですなあ」
「シルエラあ! てめぇ話の途中でいなくなってんじゃねぇぞ!」
「いやあー! 来ないでぇ!」
「そこかあっ! 逃げんなぁ!」
「いーやーあー!」CLOSE(閉じる)


#サイト未収録
#オスティナート大陸
#本編未収録
とある読者さまからの質問

Q:帝都カレヴァラの軍服にスカートはあったんですか?

A:ありましたしハインツがカヤないし、女性隊員にスカートを履いてくださいとお願いしてるというエピソードは実際に存在しますだって作者が履いてほしかっ(強制終了
エイプリルフールネタ

「カヤ、お前今日でクビな」
「……え?」
「明日からもう来なくていい」
「わ、……かり、ました」
「え?」
「では、荷物をまとめてきますので…。ああ、でも急なことなので、引継ぎのためにせめて1日、時間をもらえればと……」
「待て今日エイプリルフール!!!!!!!」
「——」

心臓に悪い嘘はやめてください byカヤ
まさか本気にされるとは思わなかった byハインツ

#サイト未収録  
#オスティナート大陸
本日のリュシアンとエルス

「被害者が申し立てしなければ、裁判は成立しない、という手段があってだな」
「つまり、魔女疑惑発言を取り下げさせろってか?」
「言い換えればそうなる」
「権力か、権力を屈服させるだけの民衆の支持が必要だな」
「金か煽ればいいのか」

#サイト未収録
#オスティナート大陸
レイ・リコード各キャラの謝り方
(作者による作者の勝手なイメージ)

(なお、本編の表記と異なる可能性あり)(えええ)

[ごめん、ごめんなさい(ね)派]
フィディール「ごめん……、ブランシュ」(※ブランシュとティアが相手の時のみ)
オズウェル「ごめんね、ルーシー」
ティア「ごめんなさい!」
カヤ「ごめんなさいね、オズ君」(※主に相手が年下な時)
アメーリエ「ごめんなさいぃ~」

[悪い、悪かった派]
ハインツ「あ、悪ぃ」
ルーシー「悪かったわね」

[すまない・すみません派]
フィディール「すまない、助かる」
カヤ「すみません、皆さん」
オズウェル「すみません、フィディールさん」(※公的、目上の相手)
ルーシー「すみません、カヤさん」(※公的、目上の相手)

[謝らない派]
エルス・ハーゼンクレヴァああああクソガキャああ(作者がキレた

#サイト未収録
ユスラの自動人形

「山桜桃梅」を語源とする自動人形。

上から順に、

山 :ハル (ヘブライ語で“山”) 
桜 :クラン・シリーニー(ゲール語で“桜”)
桃 :モモ (“桃”)
梅 :フリュネ(フランス語で“梅”であるプリュネから)

ハルとモモは男性の形で、クランとフリュネは女性の形。

#サイト未収録
#オスティナート大陸
億万長者の鉱山ディーウェス

一攫千金も夢ではないほどの金と銀、宝石などが採れる鉱山。
現在はドミヌス王国に管理されているため、一般人の立ち入りは禁止されている。

(side note)
ラテン語のdives(金持ち)に由来。

#サイト未収録
#ヴェルシエル大陸
→  チピチピチャパチャパ(時事ネタ(違う)

エルス「ちぴちぴ…」
ティア「ちゃぱちゃぱ…?」
エルス「じびじび?」
ティア「じゃばじゃば」
エルス&ティア「「………」」
エルス「ちゃぱちゃぱ」
ティア「ちぴちぴ!」

………

ルーシー「私、たまにあの二人が異世界人か何かに思えてくるのよね…」
カヤ「ルーシーさんはそれでいいと思いますよ」
ルーシー「何か通じ合ったような顔してるけれど、電波で交信でもしてるのかしら。普段は反目してる方が多いような気がするのに」
ハインツ「つか、どっちも黙って聞いてりゃチピチピチャパチャパ」
オズウェル「隊長も大概ですからね?」

#サイト未収録
#オスティナート大陸
→  冠する者

風の王女を冠する賢者
(サラ・シルフィード――本質。あるいは、原罪)

祝福の名を冠する青年
(ユーリー・アシェル――祝福はいずこ)

救世主の名を冠する聖女
(クリスティーヌ・クリストファ――さて、彼女が運ぶ救世主は)

聖母の名を冠する貞女
(マリア・ハーゼンクレヴァ――知は洗練された精神に宿りて)

淑女の名を冠する少女
(マルタ・サフリエニ――彼らは私を救ってくれた)

聖歌の名を冠する少女
(キャロル・スターシア――完全なる純粋な星よ)

#サイト未収録
#旧ネリアン大陸
#オスティナート大陸
#ヴェルシエル大陸
→  本日のキャラトーク

今川焼きか
大判焼きか
回転焼きか
べいぐどもちょもちょか

エルス&フリア「「今川焼……」」
ハインツ「回転焼き以外は潰したと思ってたが残党がいたか」
ティア&トーリ「「おやきじゃないんですか?(の?)」」
ルーシー「ちょっと待って!? 大判焼きじゃないの!?」
クィー「くきゅきゅきゅくきゅくきゅ」
フリア&ティア「「べいぐどもちょもちょ!?」」

#サイト未収録  
#ヴェルシエル大陸
#オスティナート大陸
→  サイト制作風景

こういうのをネタで面白く書ける人を仰ぎ見る一匹のげっ歯類…
うまくできないですね???₍₍ ◝('ω'◝) ⁾⁾₍₍ ◝( 'ω' )◟ ⁾⁾₍₍ (◟'ω')◟ ⁾⁾<ムズカシイゾ!!!!!
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→ サイト制作風景

二弾構えのレイアウトも候補に入ったんだけど長文化したときのことを考えたら1段がいいかなって思いましたまる
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